[八潮の企業Pickup特集]有限会社赤塚製作所

有限会社赤塚製作所さんは、八潮市でスポット溶接による線材加工を営んでいる企業です。
産業道路より綾瀬川のほうに入った南後谷の地に本社・工場を構えていらっしゃいます。

私たちの住む八潮市は、国内有数の工業都市であり製造業を営む会社が多く存在しています。 都心からすぐのこの八潮の地に小規模工場が多数工場(こうば)を開きそれが時間の積み重ねで技術集団として成長し強力な工業地域を形成しているということで有名です。そのような技術をもった製造業のプロフェッショナルの一つが、有限会社赤塚製作所さんです。

日本の産業を支える技能を持った会社が八潮市に多くいらっしゃるということは、八潮市の一つの顏でありとても誇らしいことです。

八潮市有限会社赤塚製作所 有限会社赤塚製作所

創業と企業の経緯について

代表の赤塚順次さんは、21歳でこの道に入られました。学校を卒業してから、しばらく八潮市のほかの会社に入り社会経験を積まれてのちに、先代であるお父様の営む「赤塚製作所」さんでのお仕事をスタートされたそうです。それ以来、ずっと今日に至るまで一途にスポット溶接の道をひたむきに追い続けていらっしゃいます。

赤塚順次さん 赤塚順次さん

先代のお父様は、元々スポット溶接の企業に勤めていらして、その会社の機械を借りてお母様が家で内職を始めたのが「赤塚製作所」さんのスタートでした。
当時はスポット溶接の仕事は多く忙しい毎日。需要があるということで、1988年にお父様とお母様が独立をして創られたのが「有限会社赤塚製作所」さんです。

草加市の青柳にあった会社は、やがていい物件があった縁で我らが八潮市南後谷に引っ越していらっしゃいました。

どのようなモノづくり?

製作所に私たちがお邪魔すると、鉄部品のようなものがそこかしこに積み上げられ、長年にわたって油の沁みた溶接機が並んでいるのが見えました。すっと町工場(まちこうば)特有の金属や鉄のほのかな冷たい香りが一瞬だけ鼻をかすめます。入口近くには、タナゴが数匹ゆらゆらと泳ぐ水槽が置かれ情緒を感じました。

溶接というと、一般的にお面のようなものをかぶって、溶接するようなイメージがありますが、赤塚さんの製作所では、お面はかぶりません。
まずは、足踏式のスポット溶接機の実演を見せていただくことに。線形の材料を組み合わせて、溶接機のペダルを足で踏むと、交差した部分に電力が通って抵抗熱で材料が溶けて付着します。

スポット溶接 スポット溶接

一部分のみに熱が入り、付着する、これが「スポット溶接」です。
付着させる場所も、それぞれの製品で異なりますので木型で位置出しをします。
この「型」については「木型屋さん」があり、図面を渡すと木型を作ってもらえるそうです。

木型 木型について

実際にスポット溶接するところを見せていただいたのですが、本当に一瞬赤く光ったと思うともうそこがしっかり溶けて付着しており、数十年にわたりこの作業をコツコツとされてきているのであまりにも自然な作業に見えてしまいますが、長きにわたる手作業や感覚や速度などのタイミングなどが凝縮されているのだと思われます。

スポット溶接(足踏み式) スポット溶接(足踏み式)

スポット溶接(足踏み式) スポット溶接(足踏み式)

スポット溶接機には、足踏み式とエアー式があります。両方とも4台ずつお持ちですが、エアー式のほうは圧力と電流を設定してペダルを踏みこめば自動で計算して溶接してくれるので複雑で量のあるスポット溶接に向いています。

スポット溶接(エアー式) スポット溶接(エアー式)

次には、「ケトバシ」を見せていただきました。
赤塚さんが長い線状の金属を手に機械に設置してペダルを踏むと、ある程度の太さのある棒がかっちりときれいに曲がりました。
シンプルな曲げる機械で、頑丈であり、昔お母様が内職の為に借りていた一番最初の機械もこの「ケトバシ」です。

ケトバシで曲げるところ ケトバシで曲げるところ

ケトバシで曲がったところ ケトバシで曲がったところ

このように一つひとつ、手作業で地道に曲げたり、溶接させたりして製品を作っていきます。

だいたいが大手の企業からの依頼で、デザインや設計もその企業から依頼を受けスポット溶接を行っていきます。

長さの違う線材を加工するワザ 長さの違う線材を加工するワザ

製品の種類

赤塚製作所さんは、これまでは『販促什器』や『シャンプーラック』などの分かりやすいものを受注生産してまいりました。キッチンのシンクバスケットや、お店のガムがたくさん置いてあるラックなど。企業からの依頼があり、その意向に従ってていねいなものづくりをされてきたわけです。
しかしながら、最近では医療器具の一部の部品や精密機械の洗浄カゴなど普通に生活していたら目にする事の出来ないような物の発注も増えてきたそうです。

シャンプーラックなど シャンプーラックなど

赤塚さんはスーパーに買い物に行くと「あれも作れるな~」「これも作れる」「あのワイヤーラックはできそうだな」
と、商品よりも販促什器に目がいくそうです。

販促ラック 販促ラック

販促什器 販促什器

赤塚さんは、どんな時代になっても『あったらいいな』もしくは『これ無いと困る』の声に応えられる存在でありたいと思い事業活動されています。

一口に溶接とは言っても・・・

溶接とは、熱・圧力を加えて一体化させる加工法です。その「溶接加工」にはなんと60種類以上が存在するそうです。赤塚さんも何度かおっしゃっていましたが、「溶接加工業者」と言っても、その業者によって作っているものや溶接の仕方、種類などによって全く違うお仕事内容になるようです。
例えば古くから赤塚さんとお付き合いのある溶接の会社さんたちと実際にお互いに工場(こうば)見学をした際に、全く違うお仕事内容であり、そのお仕事の技能にそれぞれがお互いに感銘を受けすごいなと尊敬の念を抱いたとのことです。

たしかに、小規模なモノづくりの町工場(まちこうば)は各々の技術に特化して来る日も来る日も、仕事場にこもりきりになって着々と作り続けている方々が殆どですから、実際にほかの業者さんやほかの企業さんがどのようにお仕事をされているのか、経営をされていっているのか、なかなか見るチャンスも思い描くこともないですよね。

モノづくりの町工場 モノづくりの町工場

不況の厳しい風をまともに受けた小さな町工場たち

昭和の高度成長期には、「需要」「供給」の両方が一気に伸び、日本中に多くの工場が建ちました。
それに伴い、下請けの小さな町工場たちも続々と生まれました。
高度成長期からバブルの時までには、ガンガン来ていた発注も、やがては、バブル崩壊の1991年ごろから徐々に徐々に減っていきました。

この頃の小さな家内工業の会社は、職人気質や工場長気質の経営者が多く景気のいい時はそれで良かったものの、受注が少しずつさみしくなってくると、売上を上げるためにはどうしたらいいのか分からないという生産者が大抵でした。
「景気悪いな」とぼやくことはできても、売上を上げるために一歩踏み出すという概念が無かったのです。

赤塚製作所さんも、そんなバブルの魔物に苦しめられつつも出来ることをコツコツと日々製作に打ち込んでまいりました。

埼玉中小企業家同友会東彩地区会との出逢い

平成の終わりに、赤塚順次さんはお父様から事業承継して製作所の代表になりました。
新しい代表となり、このままではいけないと思いつつも、職人としてモノづくりの仕事に追われる日を繰り返す毎日でした。
斜陽産業と思い込み会社の未来や自社の技術に自信を持てずにいたところ、ある時ふっと、
まずは「人に会うことだ!」「人に会って話を聞こう!」と一念発起しとにかく人と会うことを決意されました。

Facebookでご存じの方も多いかもしれませんが皆さんは「八潮NAVI」というグループを知っていらっしゃいますか?
赤塚さんはまずはその「八潮NAVI」の集まりに顔を出してみました。
そこで数人の方と知り合い意気投合。
いろいろな話を聞く中で、有限会社ジェイクラフトマンの中村さんが中心となって立ち上げた「埼玉中小企業家同友会」の新しい東彩地区会のことを知り得て、入会することになったのです。

「埼玉中小企業家同友会」では同じ悩みを持った経営者たちや、いろいろな角度でがんばっている経営者など、様々な考えや方法で事業を試行錯誤し運営する仲間に出逢いました。
赤塚さんにとっての素晴らしい転機だったことと想像します。

埼玉中小企業家同友会 埼玉中小企業家同友会

町工場を知ってもらうイベントに参加

ある日「埼玉中小企業家同友会」に加入している企業の「町工場を知ってもらおう」というイベントが開催されることになり、赤塚さんも誘われました。
いくつかの工場を経営者だけではなく一般の人たちにも知ってもらうという催しです。
初めてのことなので赤塚さんは何をどうすればいいのか戸惑いましたが仲間にいろいろ教えてもらい準備を整えました。
さていよいよ本番。
お客さんたちが赤塚さんの工場に見学に来ました。
自分の手作業や仕事内容を説明を交えながら実演すると、みんなは感嘆の声を上げて「おおーー!」と感動し、目をキラキラとさせながら赤塚さんの手元をのぞき込んできたのだそうです。

これには赤塚さんもビックリ。
今まで自分が当たり前のように毎日積み上げてきたものが、実はみんなにこんなに感動してもらえる価値のあるものだったなんて。
まさに目から鱗が落ちたようだったと、赤塚さんは語ってくださいました。

そのイベントがきっかけで、赤塚さんは自身の手仕事を紹介するために展示会に出展するようになりました。そしてそこから、世界が広がったとのことです。

みんなが赤塚さんの手仕事に感動 みんなが赤塚さんの手仕事に感動

町工場モノ作り集団「デキテク」へ加入

ある時、「埼玉中小企業家同友会」で知り合った有限会社ジェイクラフトマンの中村さんに、自社の課題を打ち明けると、【異業種コラボ集団】「デキテク」への加入を勧められました。
「デキテク」は、中村さんが“埼玉中小企業家同友会”の製造業仲間へ声を掛けてスタートした、埼玉県東南部の小規模・中小企業の経営者たちの集まりです。

この「デキテク」は、中村さんが課題や強みをモノづくりの企業同士で分かち合い楽しみながら、「夢」を語らい、実現する、これからの製造業界の中で競争せずにお互いに高めあう場を作りたいとの思いで仲間を集めた場所でした。
その考えのとおり、「デキテク」では経営者たちがお互いの仕事について意見を交換したり、楽しく飲みながら面白い話をしたり悩みを語ったり夢の話をしたりする場所として活動スタートしました。

「デキテク」に加入し、赤塚さんは、これまでだったら思いもしなかった発想や知らなかったことを知り得るようになりワクワクしながら活動し学びを深めました。そして、2年ほどで赤塚製作所は業績向上へと至ったのです。

デキテクに参加し暫くしたころ、赤塚さんと中村さんを含む「デキテク」の中の7社がアウトドア製品を開発製作するユニットとして誕生し、制作したアウトドア製品がヒット。
2022年には八潮市商工会の“八潮市推奨品”に認定され広く認知されました。
アウトドア製品が売れれば売れるほど、参加企業にも売上が入ります。
町工場が強みを活かし持ち寄りコラボレーションすることで、より強い力を発揮できるのだと、参加された企業の方たちは想いを新たにされました。

デキテクでの活動 デキテクでの活動

※デキテクについて詳しくは以下の記事をご覧ください!
町工場モノ作り集団DekiTech「デキテク」のご紹介

赤塚さんは、この「デキテク」について、「最初のころとは違い今では、みんなで楽しく活動しているだけではなく、みんなで立ち上げた合同会社&運命共同体として緊張感をもって活動しています」と仰っておられました。

自社製品と自分の好きなこと

小さな下請けの町工場としては、一般的によく「下請けからの脱却」が売上向上のテーマと言われています。
しかしながら、赤塚さんは自身の製品について「デザインする人がいないと自分のところではオリジナルデザインは作れない」と個人の会社での自社製品の必要性は強くは感じておられませんでした。

そんな中2022年の夏ごろ「デキテク」の展示会で横浜に行きました。
潮騒の香りと、光が反射する海のきらきら、見上げるほどの大きなタンカーのどっしりとした構え、船のボーっという汽笛の音、錨のマーク。
赤塚さんはハッとされたそうです。
「かっこいい!」と。
長年ずっと忘れていたけれど、赤塚さんは自分の好きなものを思い出し、心が躍るということを再体験しました。

横浜の風景 横浜の風景

「そうだ、自分の好きなものをつくってもいいかもしれない」
赤塚さんは初めてそう思ったそうです。
50歳を過ぎて、これまでのご自身の道と、そしてこれからのことを考えた時に、自分の好きなものをいっしょうけんめい作ってみようと、そう思えたそうです。

多くの人が好むような大量生産の製品は大きな会社にまかせて、町工場の企業としては自身も好きなものをとことんこだわりにこだわり抜いて、一部のマニアが好きなものを作ってみよう。
最初は売れなくても、どこかで何か繋がるかもしれない。
そのように考え、いろいろと構想を練っていらっしゃるそうです。

これからの赤塚製作所

最近は、急に新規の問い合わせが増えたそうです。
話を聞いてみると、大量生産できる会社ではなく、「この技術をもったこの部分ができる手作業の技術者」という職人が減っているのだそうです。
下請けの町工場が需要のあった頃立ち上がった会社は今ではもう引退した職人さんも多く継ぐ人もわずかとなり、高い技能をもった町工場が減っています。
それで、仕事をお願いしていた町工場が無くなってしまったり、大量生産の大きい会社に依頼できない高い技能が必要な製品を作ってくれる手仕事の会社を探している人たちがいるのだそうです。

やはり、景気の波に左右されながらも、ここまでコツコツと毎日積み上げてきたものは無駄ではなく、むしろもっと大きな価値のあるものだったんですね。

今後、赤塚製作所さんは「デキテク」での活動をしながら、その技術を頼りに発注される人たちの製品を作りつつ、ご自身の好きな世界にこだわりぬいた自社製品を楽しみながら造られていくことでしょう。

赤塚製作所 赤塚順次さん 赤塚製作所 赤塚順次さん

赤塚製作所さんというのは、そして赤塚さんという方は非常に誠実で真面目で、真摯にご自身のお仕事に向き合っておられます。
赤塚さんだけではなく、八潮市の小さな町工場の事業者の皆さんは皆さん同じように毎日モノづくりにひたむきに向き合っておられる方ばかりです。

今回赤塚さんの率直で誠実なお話しをお伺いし、私たち取材班はたいへん感銘を受け心を動かされました。
この物語はきっと、赤塚さんだけではなく、八潮市のほかの小規模事業者の皆さんにも共通する物語だと思います。
だからこそ、余計に胸が熱くなったのかもしれません。

私たち八潮市ちゃんねるも、八潮市のモノづくりの皆さんがご活躍できるように、私たちにできることで応援させていただきたいと思っております。

赤塚さんお忙しいところ取材のお時間を誠にありがとうございました。
赤塚さんご自身が納得できるワクワクした楽しい製品づくりができますように、心より応援しております。

有限会社 赤塚製作所さんについて

 コーポレートサイト
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会社名:
有限会社赤塚製作所
事業内容:
スポット溶接による商品販促品の製作
所在地:
〒340-0831 埼玉県八潮市南後谷349番地4
TEL:
048-935-2167

有限会社赤塚製作所
赤塚製作所さんのページはこちら

★お問い合わせの際にはぜひ「八潮市ちゃんねるを見て」とおっしゃってください♪

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