[八潮の企業Pickup特集]有限会社ジェイクラフトマン

有限会社ジェイクラフトマンさんは、八潮市で皮革製品の企画・製造を営んでいる企業です。
八潮市社会福祉協議会さんや、JAさいかつ八潮市ふれあい農産物直売所さんからほど近い鶴ケ曽根の地に現在はオフィス兼工房を構えていらっしゃいます。

2016年には、“JAPAN LEATHER AWRAD”入選、2017年“革のデザインコンテスト”入選を果たされ、自社開発製品が2020年~2023年に八潮市ブランドに認定されています。
まさに八潮市の誇る、この地で輝く企業です。

有限会社ジェイクラフトマンさん工房兼本社外観 工房兼本社外観

工房の様子 工房の様子

創業と企業の経緯について

代表取締役の中村忠裕さんは大手アパレルメーカーの生産管理職を経て1993年に草加市で独立起業されました。
翌年1994年に法人化し、1996年に八潮市へ移転。今年は創業30周年を迎えます。
そんな中村さんにいろいろとお話をお伺いいたしました。

代表取締役の中村忠裕さん 代表取締役の中村忠裕さん

中村さんが独立された1993年ごろは、バブル経済後で製造業がこぞって海外進出を目指している時代。
中村さんも、そのころ、アジア各国を訪れ新しい製造拠点を作る仕事に従事されていました。

そんな中、国内の工場の衰退が著しくなり製造の自給率が下がる事への懸念を持ちはじめた中村さんは、自社で生産できる人材育成を進めるべく独立起業されました。

当時から、ご自身だけの利益を追求されるのではなく、周囲の環境やこれからの社会の行く末や本質を見据えて行動される方だったのですね。
偉そうな物言いになるかもしれませんが、なかなかできることではないと思います。
思ったとしても行動に移すということは、大きな一歩だと存じます。

中村さんのご実家が葛飾区、奥様が草加市とのことで、中間地点の八潮市に住居を構えたことが事業所移転の発端だそうです。
最大の利点はアクセスの良さになります。
主要取引先が東京都心部なのでTX開業に伴い、都心までの交通の便が抜群になりました。
個人的には、都心に一番近い田舎(良い意味で)というところが、生活環境として満足されているそうですね。

そうして起業された会社は、主に大手アパレル企業のOEM生産(相手方ブランドの企画品の製造)を中心にした皮革袋物(ハンドバッグ全般)の製造業でした。

ジェイクラフトマンさんは、大手メーカーとの差別化を図り、小ロット多品種の生産を起業時から心がけていらっしゃいます。
新技術や特殊製法などの提案型企業を目指しているため、多くの内外の一流ブランドからコレクションサンプルの依頼が舞い込んでくるそうです。

オリジナルブランドRetramo オリジナルブランドRetramo

製品はどのような流通フローでユーザーの手に届けられますか?

OEM受注の生産に関しては、発注元の販売チャネル(一般的に百貨店、小売店チェーン、WEBサイト)で購入できるとのこと。自社製品に関しては自社の販売サイトで販売されています。

製品の価値

一つひとつの製品を持っていただける一人ひとりのお客様に喜んでいただけるモノ作りにこそ、価値を置いておられるとのことです。
中村さんは、大量生産による画一的な物でなく、時にはお客様のご要望にお応えすることも出来る柔軟性のある企業でありたいと考えていらっしゃいます。

一人ひとりのお客様に喜んでいただけるモノ作り 一人ひとりのお客様に喜んでいただけるモノ作り

八潮市民にとってのジェイクラフトマンとは?

ジェイクラフトマンさんの『キャリングトートバッグ』は、2020年より八潮市ブランド※1に認定されています。
この製品は、八潮市内の「蛙印染色工芸社」※2さんとのコラボレーション製品として誕生いたしました。

キャリングトートバッグ キャリングトートバッグ

※1 八潮市ブランド
市内の優れた製品などを「八潮ブランド」として認定している八潮市の取り組み。八潮ブランドとして認定された製品を、八潮の資産として市がその魅力を市内外に情報発信することで、八潮産の製品の信頼性を深めるとともに、まちの価値を高め、さらなる本市の知名度アップや地域の活性化を目指しています。

※2 蛙印染色工芸社
天然灰汁発酵建藍染で江戸小紋などの反物を生産している柳之宮の藍染めの会社さん。江戸時代から続く技術で、化学染料は使わない伝統工芸技術を今に伝えています。

キャリングトートバッグ キャリングトートバッグ

“天然灰汁建ての本藍染”は化学薬品を一切使用せずに“灰汁”“日本酒”で染料を作る大変手間のかかる伝統製法です。

この技術とジェイクラフトマンさんの皮革製品の技術コラボレーションにより商品が開発されました。

灰汁発酵建ての天然藍染の伝統製法を今に伝え守りぬいている企業の存在を、八潮市民に認知してもらいたいとの思いで手掛けられたそうです。

今後も、八潮市内の優れた技術やしっかりした経営理念のある企業と繋がり、色々な製品開発を行うことで八潮市の発展に貢献できればと考えておられるとのこと。
私たち八潮市ちゃんねるも中村様の想いには大変共感できますし、八潮市民として非常に頭の下がる思いです。

代表となる製品

やはり、なんといっても八潮市ブランドに認定された『キャリングトートバッグ』が代表となる製品です。

その開発の背景には、代表の中村さんは喘息を患っておられたことがあったようです。
以前から服やバッグに過敏であった為にノンホルモンのバッグ作りに興味をお持ちでした。
そんな中、八潮市内の「蛙印染色工芸社」さんの本藍染と出逢い、環境にも体にも優しい効能に惹かれました。

細部へのこだわり。雑誌にも紹介されました。 細部へのこだわり。雑誌にも紹介されました。

付属の革も金具もノンホルモンであるため非常に希少資材であり高価にならざるを得なかったものの、製造直売に徹して販売価格を据え置いていらっしゃいます。

製品を手に取り使うユーザーの懐事情も鑑みてくださり、一般消費者にとっては有り難いですね。

この『キャリングトートバッグ』は、開発当時は雑誌などにも紹介され、全国の医療関係者からたくさんの問い合わせが殺到しました。医療関係者の方々にも認められた素晴らしい製品ということですね。

中村さんは、やはり本藍染の優れた効能を最大に享受してもらえる化学物質過敏症の方やアレルギー疾患をお持ちの方に喜んで使ってもらえることが何よりの喜びと話されていました。

八潮市ブランドに認定 八潮市ブランドに認定

製作の困難や生みの苦しみ

製品開発に関しては、デザインや機能を配慮し創られます。
トレンドに流されないで長く愛用してもらえるモノを生み出すことは非常に難しい面があり、日々悩んでおられるそうです。
しかし、それもまた楽しめる事が事業の喜びでもある、と話してくださいました。
どんな面でも前向きで楽しんでおられるその姿勢が中村さんという人物や有限会社ジェイクラフトマンさん自体の魅力につながっているのでしょう。

付属品や材料 工房内の付属品や材料

製品のゴールとは?

「ゴールは考えたことがありません」 中村さんは常に上を、前を向いておられるようです。日々改善・改良を繰り返し、縫製に関しても精進を心がけていらっしゃるとのこと。
「ゴールと言えるかは分かりませんが、自分の創った(作ったも含め)バッグや製品を持っているお客様に町であった時は本当に嬉しいです」

制作中の代表取締役の中村忠裕さん 制作中の中村忠裕さん

現代の社会の中での役割

ここ10年で販売チャネルの多様化に伴いBtoCが盛んになりました。
その結果、作家と呼ばれる個人レベルの製造者が増え、今までになかったようなコアな製品が世の中に広まっています。
品質や製法・企業の理念なども多様化し玉石混同したものも多く存在します。この状況は、言い方を変えれば企業の競争が激しくなった状態です。

そんな市場の中、ジェイクラフトマンさんは多種多様な製造者と競争するのではなく、異業種間での“水平的”な関係を構築する事で地産・地消・地就が出来る企業を目指しておられます。
市内の蛙印染色工芸さんとのコラボレーション製品もその一環であり、他方でも様々な企業との連携をされています。
この先100年残したいと思われる事業展開を進めておられるとのことです。
中村さんにとって、未来の行く末を鑑みるという意味は、ご自身だけではなく、いろいろな人と線でつながっていくこと。
街や仲間の輪が広がって倍以上の価値を生み出すことを常に視野に入れていらっしゃるのですね。

町工場モノ作り集団デキテクの仲間たち 町工場モノ作り集団デキテクの仲間たち

SDGsとしての取り組み

皮革の製造過程では多くの革が廃棄されています。
革は食肉の副産物であり世界最古のリサイクル品として有名ですが、生皮を加工して“革”にしたことで新たな資源となってしまい、その廃棄に関しては様々な環境への配慮が必要な側面を持ってしまっているようです。

ジェイクラフトマンさんでは、10数年前からハンドバッグの廃材を再利用した製品を“RE:CO” ~レコ~というブランドよりリリースしておられます。
コンセプトはCO2削減です。
革には化学薬品を含むものも多く、土中などで生分解しなくなっているものもあるとのこと。
廃棄に関しては焼却が主な廃棄方法で、その際に多くのCO2と共に、六価クロムという公害物質を放出します。
“RE:CO”は廃棄予定の革なので、資材代金がかからずに加工賃だけで構成されているので企業などのノベルティとして推奨されています。

このように、廃棄を減らし、少ない資源で良質な良いものを得られるように生産や消費ができる形態は、
「SDGs12.つくる責任 つかう責任」として体現されます。

現代は、生産性が高まったことにより多くの物で溢れています。
高い生産性も永続的に続くとは限りません。
物を消費するということはその物を作り出す資源を消費するということです。
このまま物を作り続ければ資源はいつか枯渇してしまう可能性が高まるのです。

ジェイクラフトマンさんの製品のように廃棄されるはずだったものに新しい価値を見出すことこそ、国連サミットで採択された国際目標の一つである持続可能な取り組みに当てはまります。

皮革材料 皮革材料

今後の展望

ジェイクラフトマンさんの一番のミッションは、“人作り”とご自身で認識されているそうです。
コロナ禍で現在ストップされていますが、ジェイクラフトマンさんの持つ加工機械と資材を若手のクリエーターへ開放し、技術だけではなくモノ作りのマインドや、誇りなどを伝承していきたいと考えておられるそうです。

機械や工房を開放すること 機械や工房を開放すること

【異業種コラボ集団】DekiTechさんについて

中村さんは、【異業種コラボ集団】DekiTechさん※3に参画されています。
参画というか、代表であられます。
このDekiTechさんというのは八潮市だけではなく、埼玉県東部の町工場が集まってそれぞれの技術をコラボレーションし、夢を語らい実現する異業種集団です。
八潮市からは3社が参加されています。

※2 【異業種コラボ集団】DekiTech
DekiTechについて詳しくはこちら

中村さんは、「DekiTechは日本においてこれからの時代に必要なマインドを実践する場です」とのこと。
メイドインジャパンなどと言って驕っている場合ではないと強く製造業を憂いておられます。
“弱者連合”ではなく、“各社の強み”の連携を目指していらっしゃいます。

一つの企業では成し得ないことを実現する為に「DekiTech」は必要なパートナー企業として強く認識されているそうです。
難しい課題も、一つひとつ解決する事で新しい視野が広がる楽しみにもなっておられるそう。

ぜひ、皆さんも【異業種コラボ集団】DekiTechの活動を覗いてみてください。
DekiTechについて詳しくはこちら

有限会社ジェイクラフトマン代表の中村さんについて

中村忠裕さん

1962年7月 東京生まれ60才。(2023年取材当時)
高校卒業後大学進学するが家庭の事情で中退。
その後、ハンドバッグ製造卸業の(株)SLIPKNOT (株)ホワイ を経て 独立起業現在に至る。
1996年 市内へ事業所移転
2013年 “八潮市優良・優秀技術者”認定
2020年、2021年、2022年、2023年 “八潮市ブランド品”認定
2020年よりDekiTech合同会社の代表社員も務める。

中村さんに今回お話をお伺いし、大変勉強になりました。中村さんのように、旧くも未来も見据えて横や縦の繋がりを大切にし、競争ではなく手を取り合って行くという想いをお持ちの経営者の方が八潮市にいらっしゃるということは、同じ市内の経営者の皆さんにとっても心強いことだと思います。

八潮市ちゃんねるとしても、八潮市を盛り上げたいという気持ちは同じです。背中を押していただいたようで、私たち編集部も想いを新たにすることを気づかされました。
これからも、ぜひ八潮市でのご活躍を期待しております。
お話しを聞かせてくださり、誠にありがとうございました。(2023/1/21)

有限会社ジェイクラフトマンさんについて

 コーポレートサイト
 オンラインストア
 藍染製品

会社名:
有限会社ジェイクラフトマン
事業内容:
袋物製造業(裁断、2次加工、縫製、試作、企画)、オリジナル製品の企画開発ならびに製造
所在地:
〒340-0815 埼玉県八潮市鶴ケ曽根1490-5 藤波ビル1階
TEL/FAX:
048-996-4447/048-996-4652

有限会社ジェイクラフトマン
ジェイクラフトマンさんのページはこちら

★お問い合わせ際にはぜひ「八潮市ちゃんねるを見て」とおっしゃってください♪

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